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Hold Fast that Which is Good

良きものをつかむために綴るブログです。皆様のレスポンスが何よりの活力になります。どうぞよろしく。

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ソイレント・グリーン

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リチャード・フライシャー監督作品

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今回ご紹介する映画は実写映画ですが、あまりにも問題作であることから
今でもかなり有名な映画となっているものです。
今回の映画は、1973年にアメリカで発表されたリチャード・フライシャー監督の
SF映画、ソイレント・グリーンです。

主演が猿の惑星でも超有名なチャールトン・ヘストンなのにもかかわらず、
作りは雑な上にB級色がとても強い映画なんですが、
最後まで観れば、この映画の存在を忘れられなくなる程強烈な衝撃を受けるのは
必至の大問題作であることがお分かりいただける内容となっています。
今日はそんな40年以上前のとんでもなくブッ飛んだ映画について
色々と書いていきたいと思います。

ソイレント・グリーン  (字幕版)

ソイレント・グリーン  (字幕版)

 

 

 

 

舞台から大問題

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この映画は、2022年のニューヨークが舞台となっていますが
その舞台背景からすでに大問題な状態です。

2022年、ニューヨークは人口爆発(4,000万人!)により自然は失われ、
街は住居を失った失業者であふれまくっていました。

自然が失われたので温暖化問題がもの凄く深刻な状況となっており、
周りは住宅難の失業者だらけなので、食料不足も大変なことになっていたのです。

 

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そのような庶民には週に1回だけ、食料の配給が行われていました。
配給しているのは、【ソイレント社】という食品加工会社で、
今までは高栄養食品である【ソイレント・レッド】【ソイレント・イエロー】
といったものを出していましたが、
ソイレント社が新たに、海洋プランクトンから生成した
【ソイレント・グリーン】という食料品を開発し、配給をしていたのです。

 

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ところが人口爆発状態の上に週1回だけの配給なので、
当然ソイレント・グリーンにも供給不足の問題が発生します。
人々は「配給量が少なすぎるのではないか」という大きな不満を持っており、
遂にはそれが暴動へと発展してしまいます。

 

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しかし、そのような庶民にはパワーショベルで強制排除して無理やり黙らせるという
容赦ない制裁措置が待っています。
ニューヨークはソイレント社と州と警察が全権を掌握しているようなものでしたので、
反乱分子はこのように叩き潰すのが通例となっていました。
このパワーショベルからして、要は【ゴミ収集車】ですので、
ぶっちゃけて言いますと庶民など塵にすら劣る存在なのです。
この映画は、このような何もかもが完全に破たんしているディストピアな状態から
物語が始まるのです。

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登場人物も大問題

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この映画の主人公で、ニューヨーク・シティの刑事【ロバート・ソーン】(画像左)は
元大学教授の【ソル・ロス】(画像右)と同居暮らしをしていました。
ぱっと見では特に語るべきところはないように見えるかもしれませんが、
実はこの映画の世界は、【知識を特に必要としていない】という概念があるため、
ソルのような、知識はあるが他に取り柄がない老人は【本】として扱われています。
つまりソルは人間にも値しない、【物】としての存在なのです。
ソーンはそんなソルと、刑事の仕事上必要な存在として一緒にいるのです。

 

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ある日、ソーンはある殺人事件の担当を任されることになります。
被害者は、【ウィリアム・サイモンソン】という弁護士でした。
ソーンはサイモンソンのボディー・ガードを務めていた【タブ・フィールディング】
尋問を行いながら捜査を開始します。
最初は強盗の仕業だと考えていたソーンでしたが、
尋問した結果、タブが怪しいと思うようになり、ソーンはさらに現場を捜査します。

 

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その際ソーンは特権階級の家を捜索がてら、
職権濫用して家の食べ物や生活用品などを勝手に押収して私物化したりします。
何故なら金持ちにはあって当然の物も、
庶民側のソーンにはこの上なく縁のない宝物に等しい存在だったからです。
ソーンはそこにあった水や酒、石鹸、肉などの存在に驚愕の色を隠せませんが、
ためらいもなくそれらををかっさらっていきます。
そうでもしないと良い物にはありつけない程物資・食料不足の状態でしたが、
警官が職権濫用で平然と人の家の物を盗む程、モラルもなくなっていました。

 

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現場にはもう1人、女性がいました。
彼女は【シャーン】という名前のサイモンソン専用の【置き物】でした。

舞台説明の方では書きませんでしたが、この世界は格差社会となっており、
貧富の差が尋常ではない程激しいものになっています。
庶民側もひどいものでしたが富豪側も大概なもので、
女を自分の道具や所有物として利用することが出来る構図になっていました。

殺害されたサイモンソンは特権階級故に、美女を側に置かせることが出来ており、
その美女は【家具】として、主人に仕えることが役割となっていました。
よってシャーンもまた、人間に値しない存在であったわけです。
いい暮らしをさせてやる代わりに、男が求めたら否応なしに応じなければならない等
どう見てもロクな暮らしではありません。

このように、主要人物含め全員が何らかの曰くつきであることから、
真っ当な世界では全くないことが明らかになっていくのです。

 

 

ソイレント・グリーンの秘密

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ソーンは捜査を進めるうちに、
幾度となく追手に追跡や妨害を受けるようになっていきます。
挙句の果ては、どさくさに紛れて殺されそうになったりもします。

「こんな目に遭うということは、この事件にはバックに大物が絡んでいる」
推理したソーンは、現場から持ち帰った大きな本から、ある驚くべき事実を知ります。
なんと、殺されたサイモンソンは、実はソイレント社の幹部だったのです。

ソーンはシャーンに更なる情報を求めた結果、サイモンソンが殺される直前に
教会に行っていたことが判明します。
ソーンはサイモンソンがそこで告解したと踏み、殺された動機が判るかもと思って
教会に直行して親父に話を聞こうとしますが、神父は告解自体は認めたものの、
内容については決して話そうとはしませんでした。

 

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署に戻ったソーンは上司の【ハッチャー】から、突然の捜査終了を言い渡されます。
どうやらソイレント社が圧力をかけて捜査を潰しにきたようです。
しかしそんなものに怯む気など全くなかったソーンは、独自に捜査を続行します。

 

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一方、ソルはソーンが持ってきた大きな本、すなわちソイレント社の部外秘研究データ
から、サイモンソンが殺される原因となったソイレント・グリーンの恐るべき秘密
知り、心底絶望してしまいます。
ただでさえ自分は物扱いで夢や希望が持てていなかったソルにとって、この事実は
この先人類には一片の未来もない、完全な絶望を見せつけられてしまったのです。
ソルはなんとここで、アメリカ政府公認の安楽死施設【ホーム】に向かうことを
決断するのです。

 

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もちろん、ソーンはソルの安楽死(自殺)を食い止めようとホームへ駆け込みますが、
ソルの意志は固く、ソルは施設内にある巨大なスクリーンに目一杯映し出された、
かつて世界に存在していた美しい自然の風景の映像を、
ベートーヴェン交響曲第6番「田園」等の実に美しいクラシック音楽を聴きながら
安らかに息を引き取ろうとしていました。

ソルは死ぬ間際にソーンにソイレント・グリーンの恐るべき秘密を語り、
その裏付けを取ってくるよう要請します。
間もなくして息を引き取ったソルの言う通り、驚愕しながらも
ソイレント・グリーンに関するある場所へ潜入したソーンがそこで見たものは・・・
という物語です。

果たして、2人の人間が人生に絶望して死んでいく程の破壊力を持つ
ソイレント・グリーンの秘密とは一体何なのか?
映画は誰もが予想し得ない衝撃のオチを迎えることになります。

<ソイレント・グリーン>「ペール・ギュント第1組曲」/朝(グリーグ)

<ソイレント・グリーン>「ペール・ギュント第1組曲」/朝(グリーグ)

「ペール・ギュント第1組曲」/2.オーゼの死

「ペール・ギュント第1組曲」/2.オーゼの死

 

 

まとめ

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とにかくこの映画は、夢や希望など欠片たりとも存在しません。
何から何までおかしいし、狂っているし、決して実現してもらいたくはない未来を
露骨にみすぼらしさを強調して映しています。

この時代のSF映画は何かと暗いテーマを扱ったものが多かったようですが、
この映画は暗さはもちろん、具体的に【50年後の世界はこうなる】といった
近未来についてのメッセージ性も高いことが大きな注目を集めました。
今はその時代まであと7年となりましたが、見比べてみると段々と
この映画が描いたものに現実が近づいているような気がしてなりません。
少なくとも「ゆうてもSFやろ?」とは言えないものがあります。

 

実際、すでにアメリカとカナダでは【ソイレント】という完全栄養食が存在します。
【これさえあれば食事など不要!】とうたったことで今も注目されていますが、
名前からしてこの映画を思い起こさせるので、オチを知っている私から見れば
それはもう末恐ろしいものとしか考えられませんw

また、人口爆発問題や超格差社会もまさに現実のものとなっています。
さすがに本や家具化は置いといても、今まで私が観てきた未来予測を取り扱った
見せ物の中では、この映画が最もその予測を的中させている方ではないかと思います。
私としては農業に勤しむ立場上、この映画のような未来など全く許容出来ませんが、
現状を見てると危機感を抱かざるを得ないものがあります。

 

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この映画はもちろん最後のオチが強烈なんですが、それ以外に見せ場があるとすれば
やはり、ロスの安楽死のシーンになるでしょう。
と言うのも、この時ロス役のエドワード・G・ロビンソン
リアルでも末期がんによる死の直前の状態であったため、
実際この映画の公開を待たずして亡くなったというエピソードがあるからです。
耳もよく聞こえない状態で、とても映画俳優をするコンディションではなかったのにも
かかわらず、名演技を披露されたのはまさにプロフェッショナルとしか
言い様がありません。
正直、この映画がただのB級映画で終わらなかったのは彼の名演技あってこそです。

 

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ちなみに、この映画のオチをほぼ流用したゲームとして、ゼノギアスが有名です。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、この映画のタイトルを冠した名前ですので
ゲームをプレイされた方はピンと来るものがあるのではないでしょうか。

 

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決してアカデミー賞級の映画でもないし、見せ場も雑だしセットもショボいんですが、
それを補って余りあるストーリーとインパクトがウリの傑作ですので、
まだ観たことがない方はこの機会にご覧になってみてはいかがでしょうか。

 

それにしてもこの映画を観てしまってからは、ベートーヴェン交響曲第6番「田園」
聴く度に、背筋が凍る思いをするようになってしまいました。
もし、皆さんの中で「田園」を聴くことで心に安らぎとかを求めるのであれば、
絶対にこの映画は観ない方がいいでしょうw

交響曲 第6番「田園」/第1楽章(ベートーヴェン)

交響曲 第6番「田園」/第1楽章(ベートーヴェン)

 

 

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