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【児童文学】クローディアの秘密

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あとで読む

E. L. カニグズバーグ作、松永ふみ子訳

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今回はこのブログではなかなかのアクセス数と反響をいただいている
【児童文学】シリーズから1冊取り上げてみようと思います。
思い出のマーニーを除けば2冊目となる今回の作品は、
1967年にアメリカで発表され、アメリカの中で最も優れた児童書に与えられる
ニューベリー賞】を受賞した、E. L. カニグズバーグ作、松永ふみ子訳の
ミステリー・アドベンチャー作品、クローディアの秘密
ご紹介します。
(日本では岩波少年文庫から出版。
 原題:From the Mixed-Up Files of Mrs. Basil E. Frankweiler)

マーニーや前回のトムは真夜中の庭ではイギリスの児童文学でしたが、
アメリカの児童文学はどうなっているのかと興味を持って辿り着いたのがこの本です。
タイム・トラベルものでもファンタジーでもない、どちらかと言うと現実路線の色が
強く、ページ数も238ページとそんなに多くないという、今までご紹介したのとは
また違ったテイストを持った作品について、色々書いてみようと思います。

From the Mixed-Up Files of Mrs. Basil E. Frankweiler (English Edition)

From the Mixed-Up Files of Mrs. Basil E. Frankweiler (English Edition)

 

 

 

特殊な体裁

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物語をご紹介する前に、この本について1つ注意点があります。
この本は画像の老婆、【ベシル・E・フランクワイラー夫人】が、
自らの専属弁護士である【サクソンバーグ弁護士】に宛てたもの、という形で
物語が展開されています。
物語の登場人物(AとB)があれこれ行動しているのが描かれている中、
至る所に割り込みの形でフランクワイラー夫人がサクソンバーグに向けて
メッセージを投げかける場面が出てきます。

つまり、この本は【「AとBは~していた」という物語を夫人が弁護士に読ませる】
という特殊な体裁で書かれています。
サクソンバーグは物語中1度も発言がない人物なので、
読者はサクソンバーグと同じ視点で読むことになります。

このフランクワイラー夫人というのが、いわゆる欧米社会では高貴の者出身ですので、
立ちふるまいが完全に自信家で口うるさいという、海外ドラマとかでよく見る
貴族(貴婦人)のそれですw
物語の描写中、突如割り込みで
「サクソンバーグさん、このようにしなければなりませんよ」とか
「サクソンバーグさん、あなたともあろう人が美術館に行こうともしないとは驚きだ」
などということを素で言ってのけるので、人によっては回りくどさや説教臭さが
目につくかもしれません。

以上のことを踏まえ、それでも興味がお有りの方にはぜひオススメしたいと思います。
以下からは物語のあらすじをご紹介します。

メトロポリタン美術館

メトロポリタン美術館

  • ランドセルズ
  • ヴォーカル
  • ¥150

 

 

オール5の家出計画

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ニューヨーク州グリニッチに住む主人公の少女、【クローディア・キンケイド】
4人姉弟の長女であることを理由に、家の中で様々な割りを食っている現状に
嫌気が差していました。
小遣いが少ないだの家事をしなければいけないだの理由は色々ありましたが、
「ただのオール5の優等生でいるのが嫌になった」というのもあって、いっその事
家を飛び出してしまおうと考えたのです。

しかし、ただ感情のあまりに飛び出すのは馬鹿げていると思っていたクローディアは
家出に際し、綿密な計画を練って、とある特定の場所に逃げ込むことに決めました。
その場所というのが、同じニューヨーク州のマンハッタンにある世界最大級の美術館
である、メトロポリタン美術館でした。

クローディアは家出を決行するにあたり、パートナーを選ぶことにしました。
パートナーは、下から2番目の弟、【ジェイミー・キンケイド】に決めました。
選んだ理由は、ジェイミーがやたら金持ちだったからでしたw
クローディアは色々金策しても4ドル18セントでしたが、ジェイミーはその約6倍の
24ドル43セントも持っていたので、家出にはうってつけの環境を有していたからです。

ジェイミーは当初「何故家出しなくちゃいけないのか」と思っていましたが、
相手のクローディアは頭が回る少女でしたので、いいように口で丸め込まれた結果、
すぐさま家出に加勢することを決断しますw
かくして、2人はメトロポリタン美術館に向けて、
クローディア考案の冷静沈着な家出計画を実行することとなるのです。

メトロポリタン美術館

メトロポリタン美術館

  • 新倉 芳美
  • チルドレン・ミュージック
  • ¥200

 

 

美術館での過ごし方

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クローディアはバイオリンケースに、ジェイミーはトランペットケース
衣服をたくさん詰め込んで出発し、役割分担をしつつ見事に家出に成功した2人は
数時間かけてようやく美術館にたどり着きました。
そこは26,000人以上の参観者が80,000平方メートルはある巨大な施設をあちらこちらと観覧して回る所でしたので、普段は学校にいるはずの2人が入ったところで
何の不思議も咎められもありませんでした。

しかし、2人はこの美術館に夜を明かすつもりで訪れたわけですから、閉館時間後の
美術館での過ごし方、とりわけ守衛や夜警の対処が必要になりました。
そこで2人は洗面所に隠れたりして閉館時間後を、
そして展示されていた国有品のベッドで1日を過ごすことに成功するのですw

メトロポリタン美術館

メトロポリタン美術館

  • 吉田美智子
  • チルドレン・ミュージック
  • ¥250
メトロポリタン美術館ガイド 日本語版

メトロポリタン美術館ガイド 日本語版

 

 

 

天使の像

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2人が家出をして翌日、美術館では普通ではない光景がありました。
美術館はいつも1,000人以上の列が形成されているのですが、その列にそって
新聞社のカメラマンが歩いていたからです。
2人は列に並び、何が起こっているのかを確認することにしました。

そこに存在していたのは、【天使の像】でした。
実に神々しい佇まいをしているその像を見たクローディアは、すっかり像に
夢中になってしまいました。
「美術館には優雅で洗練されているものばかりなのに、何故あの像が
 よりもの凄く重要なものに見えたのかしら?」と思ったクローディアは、
この天使の像のことを調べ上げてみようと思うようになります。

そこまでクローディアが執心するこの天使の像ですが、
その翌日に発行された新聞記事によると、
「この像見たさに約10万人が訪れたが、その像というのが
 イタリア・ルネサンスの巨匠、ミケランジェロの初期の作品かもしれないと
 言われている」ということでした。
この像は美術館が競売で225ドルで買い入れたので、最大の掘り出し物かもしれない
という驚くべきことも書かれていました。
同時代で同価値のダ・ヴィンチの作品が500万ドルだったことを考えると、
225ドルなどまるで雀の涙にもならない話です。

一体あの像にはどんな魅力や秘密があるのか?
2人は像のことに焦点を絞って色々と勉強していくようになります。

メトロポリタン美術館

メトロポリタン美術館

  • 井上 侑
  • J-Pop
  • ¥250

 

 

像に刻まれた印

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2人は後日、いつものように守衛達を回避しながら像の近くへやって来ました。
像には直接触ることが出来ないので悪戦苦闘する中、ジェイミーが青いビロードに
ある3つの輪の中に1つに文字が書かれているのを見つけます。
最初は【W】だと思っていましたが、よく見ると【M】であることがわかり、
クローディアはこれをミケランジェロのM】だと確信します。

2人はミケランジェロに関する本を探した結果、
表紙に同じ3つの輪が描かれた本を見つけ、ビロードにあった3つの輪は、
ミケランジェロが自分が所有者であるという印をつけた】ということを知ります。

歴史に残る大発見ではないかと大喜びした2人は、このことを所有者である
美術館の館長宛てに手紙を書いて、中央郵便局で私書箱を借り、そこに返事を送らせる
よう仕向けることで、向こうが助けを求めてきたら、自分たちは英雄として
今までとは違う自分になれるようにと計画しました。
特にクローディアは、このまま家に帰るようではただのぽっと出の旅行と同じだから、
そうならないためにも自分だけしか知らない天使の秘密を持って違う自分になりたい
という欲求がありました。

数日後、その美術館から返事が届くことになるのですが、その内容とは・・・
という風に話は続いていきます。

 

 

まとめ

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238ページで終わるだけあって、展開がかなり早いです。
2人の子供の性格の違いや特徴をしっかり描いているので、やりとりが面白いです。
その上アメリカ人特有のウィットに富んだ表現も加わり、
さらに面白味が増しています。

しかしファンタジー色は皆無と言っていいし、小学生を対象にしている本にしては
結構実直な内容なので、人を選ぶ本であることは間違いないでしょう。
最初に書いた【特殊な体裁】も相まって、かなり異色の作風です。

さて、この記事の至る所に、ある曲を挟み込んでいるのにお気づきかと思いますが、
実はその曲とこの本は深いつながりがあります。
この曲はメトロポリタン美術館(ミュージアム)といい、
大貫妙子さんの名曲中の名曲です。1984年に発表されました。

 

メトロポリタン美術館

メトロポリタン美術館

  • 大貫 妙子
  • ジャズ
  • ¥250

この曲は彼女が実際にメトロポリタン美術館に訪れて作った曲で、
1984年にNHKみんなのうたで流れて以降、
日本中の子供たちに恐怖(トラウマ)を与えた曲として実に有名ですw
私もこの曲の直撃世代ですから、耳にタコが出来るほど聞かされた曲ですが、
当時の私は怖いとは思わず、「変な曲~」としか思っていませんでしたw
とは言え名曲であることは間違いありません。みんなのうたの代表曲の1つです。

この曲の歌詞の元ネタがこの本でして、
バイオリンケーストランペットケース天使の像エジプトといったフレーズは
まさにこの本の内容と合致します。
ただし、この本はタイム・トラベルを書いたものではないので、
何から何まで合致しているわけではありません。

いずれにせよ、【日本人なら1度は聴いたことのある曲の元ネタ】という一面も持つ
この児童文学は人こそ選ぶものの、私としてもぜひオススメしたい1冊です!
アクは強いが子供の魅力を見事に描いている傑作ですので、
ぜひ1度読んでみていただければと思います。

クローディアの秘密 (岩波少年文庫 (050))

クローディアの秘密 (岩波少年文庫 (050))

 

 

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